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細胞内からのビタミンC排出機構

細胞内のビタミンC濃度は、細胞外からの取り込み、消費と分解および再利用、そして未だ解明されていない細胞外への排出機構によって調節されていると考えられています。ビタミンCの細胞内への取り込み機構は、還元型ビタミンCであるアスコルビン酸(AA)と酸化型ビタミンCであるデヒドロアスコルビン酸(DHA)で異なります。すなわち、AAはナトリウム依存性ビタミンCトランスポーターSVCT1およびSVCT 2により、そしてDHAは促進拡散型グルコーストランスポーター(Glut)ファミリーを介して細胞内に取り込まれます。DHAは基本構造がグルコースと似ているため、これらグルコーストランスポーターを介して細胞内に取り込まれます。その後、DHAはAAに還元されて利用されます。
一方、AAやDHAの細胞外への排出機構については、間接的な機能研究が多く、直接的にAAやDHAの細胞外への排出を司る特異的輸送体の同定には至っていません。ここでは、ビタミンC排出機構に関する研究の現状について書かれたレビュー1-3) を基に、5つのAA排出機構の候補(図)となる研究の現状について概説します。

図 候補となる5つのビタミンC排出機構

①容積感受性陰イオンチャネル(Volume-sensitive anion channels):細胞容積の増大(膨張)を感受し、容積感受性陰イオンチャネルが開口してAAが排出される。

②グルタミン酸-アスコルビン酸異種交換機構(Glutamate-ascorbate hetero-exchange):グルタミン酸の再取り込みに伴いAAが排出される。

③アスコルビン酸-アスコルビン酸同種交換機構(Ascorbate-ascorbate homo-exchange):細胞内にAAが取り込まれ、同時に細胞内から細胞外にAAが排出される。

④ギャップジャンクションヘミチャネル(Gap-junction hemichannels):ギャップジャンクションを介してAAが隣接する細胞に排出される。

⑤アスコルビン酸含有小胞の開口分泌(Exocytosis of ascorbate-containing vesicles):分泌小胞内のAAが開口分泌(エキソサイトーシス)により排出される。

但し、②および③のAA排出経路については否定的な意見が多い。

 

1. 容積感受性陰イオンチャネル(Volume-sensitive anion channels)

細胞は細胞外からの各種イオンやグルコースなど栄養成分の取り込み、また代謝異常による血漿浸透圧の変化などにより、実質的な細胞容積が変化します。細胞はその容積変化を感受して、細胞容積を維持するために、容積感受性陰イオンチャネルを介して浸透圧を調節する機構が働きます。その際にAAも同時に細胞外に排出することが報告されています。この排出機構は最も有力なAA排出機構としてよく研究されています。例えば、中枢神経系に存在するグリア細胞のひとつであるアストロサイトを低浸透圧刺激により細胞を膨張させると、これに続く細胞容積の減少に伴いAAも細胞外に排出されます4) 。この時、AAの排出は陰イオンチャンネル阻害剤のひとつ4,4’-diisothiocyanatostilbene-2,2’-disulfonic acid(DIDS)によって抑制されます。同様の結果はヒト肝臓癌由来細胞株HepG2細胞や冠状動脈内皮細胞など他の細胞でも報告されています5),6) 。しかし、AAの排出を伴う特異的な容積感受性陰イオンチャネルの同定にまでは至っていません。また、このAAの排出を伴う容積感受性陰イオンチャネルの特異的阻害剤もまだ見つかっていません。そのため、容積感受性陰イオンチャネルが確かにAAを細胞外に排出するのか、その確証は得られていません。また、容積感受性陰イオンチャネルを介したAAの排出機構が存在したとしても、その割合はAA排出機構全体からみてもおよそ50%程度であると推定されています。従って、この機構以外にも他のAA排出機構が存在する筈です。

2. グルタミン酸-アスコルビン酸異種交換機構(Glutamate-ascorbate hetero-exchange)

興奮性神経伝達物質のひとつであるグルタミン酸が細胞内に再取り込みされる際に細胞外のAA濃度が増加することから、グルタミン酸-アスコルビン酸異種交換機構の存在が示唆されています。グルタミン酸の再取り込みの際にみられるAAの細胞外への排出は神経細胞やアストロサイト、神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞で報告されています7),8) 。しかし、最近の研究でアストロサイトにおけるグルタミン酸の再取り込みはナトリウム依存性グルタミン酸共輸送体がその主経路であると考えられており、これまでに観察されていた細胞外へのAAの排出は、グルタミン酸の取り込みに伴う細胞容積の変化を感受して、1.で述べた容積感受性陰イオンチャネルが働き、細胞外にAAが排出されたのではないかと考えられています。実際に陰イオンチャンネル阻害剤DIDSの添加によりAAの排出が抑制されました7) 。何れにせよグルタミン酸の再取り込みの際にAAの排出を担うグルタミン酸-アスコルビン酸異種交換輸送体は未だ同定されていません。

3. アスコルビン酸-アスコルビン酸同種交換機構(Ascorbate-ascorbate homo-exchange)

予め放射標識AA(14C-AA)を取り込ませた細胞の培地に未標識AAを添加すると、添加した未標識AAの濃度依存的に14C-AAの排出がみられることからアスコルビン酸-アスコルビン酸同種交換機構の存在が以前から示唆されていました。しかし、最近Mayら9)によりこのアスコルビン酸-アスコルビン酸同種交換機構は、別の排出機構により細胞内から排出された14C-AAが培地中の未標識AAと競合して、AAトランスポーターであるSVCTにより取り込まれる割合が減少したためであると報告されました。すなわち、細胞外の未標識AA濃度が高くなると、細胞内から別の機構により排出された14C-AAがSVCTによって再度、取り込まれる割合が少なくなります。その結果、細胞外の14C-AA濃度は見かけ上、高くなり、あたかも細胞内から14C-AAの排出が未標識AAの濃度依存的に増加したかのように見えてしまいます。このAA再取り込みの問題点を回避するためには、sulfinpyrazonなどSVCTの特異的阻害剤を同時に用いたり、RNAiによりSVCTの発現や働きを抑制してからAAの排出を調べる必要があります。

4. ギャップジャンクションヘミチャネル(Gap-junction hemichannels)

ギャップジャンクションは隣接する2つの細胞をつなぐ連絡通路で、低分子を通すチャネルとして働いています。ギャップジャンクションを構成する基本分子がコネキシンで、4回膜貫通型タンパク質です。コネキシンが6個集まってコネクソンというヘミチャネルを作り、さらにヘミチャネル2個が合体してギャップジャンクションを構成します。このギャップジャンクションを通ってAAが隣接する細胞に移動することがリポソームを用いた研究により示唆されています10) 。しかし、細胞を用いた直接的な証拠は未だ得られていません。

5. アスコルビン酸含有小胞の開口分泌(Exocytosis of ascorbate-containing vesicles)

内分泌および外分泌細胞でつくられる分泌小胞内にはAAが高濃度に存在することが以前から知られており、開口分泌による細胞外へのAA排出機構として提唱されています。例えば、副腎髄質細胞から放出されるクロム親和性小胞内にはmMオーダーのAAが検出され、実際にこれらの小胞にはSVCT2が多く発現していることが報告されています11) 。しかし、開口分泌によるAA排出機構がAA排出機構全体のどの程度を担っているかまでは明らかではありません。

これまで述べてきたように細胞膜を通過するAA排出機構には、5つの候補があげられます。AA排出機構の存在意義は、小腸上皮細胞では吸収されたAAの血中への輸送、腎臓では近位尿細管から再吸収されたAAの血中への輸送、および他臓器へのAA分配のため肝細胞から血中への排出など、体内のAAバランスの維持です。しかし、未だAA排出に関わる特異的輸送体がひとつも同定されていません。今後、AA排出機構に関わる特異的輸送体が同定されることを望みます。


文 献

  1. Corti A, Casini AF, Pompella A (2010) Cellular pathways for transport and efflux of ascorbate and dehydroascorbate. Arch Biochem Biophys500, 107-115
  2. Lane DJ, Lawen A (2009) Ascorbate and plasma membrane electron transport--enzymes vs efflux. Free Radic Biol Med47, 485-495
  3. Wilson JX (2005) Regulation of vitamin C transport. Annu Rev Nutr25, 105-125
  4. Siushansian R, Tao L, Dixon SJ, Wilson JX (1997) Cerebral astrocytes transport ascorbic acid and dehydroascorbic acid through distinct mechanisms regulated by cyclic AMP. J Neurochem68, 2378-2385
  5. Upston JM, Karjalainen A, Bygrave FL, Stocker R (1999) Efflux of hepatic ascorbate: a potential contributor to the maintenance of plasma vitamin C. Biochem J342 ( Pt 1), 49-56
  6. Davis KA, Samson SE, Best K, Mallhi KK, Szewczyk M, Wilson JX, Kwan CY, Grover AK (2006) Ca2+-mediated ascorbate release from coronary artery endothelial cells. Br J Pharmacol147, 131-139
  7. Wilson JX, Peters CE, Sitar SM, Daoust P, Gelb AW (2000) Glutamate stimulates ascorbate transport by astrocytes. Brain Res858, 61-66
  8. May JM, Li L, Hayslett K, Qu ZC (2006) Ascorbate transport and recycling by SH-SY5Y neuroblastoma cells: response to glutamate toxicity. Neurochem Res31, 785-794
  9. May JM, Qu ZC (2009) Ascorbic acid efflux and re-uptake in endothelial cells: maintenance of intracellular ascorbate. Mol Cell Biochem325, 79-88
  10. Ramundo-Orlando A, Serafino A, Schiavo R, Liberti M, d'Inzeo G (2005) Permeability changes of connexin32 hemi channels reconstituted in liposomes induced by extremely low frequency, low amplitude magnetic fields. Biochim Biophys Acta1668, 33-40
  11. Bornstein SR, Yoshida-Hiroi M, Sotiriou S, Levine M, Hartwig HG, Nussbaum RL, Eisenhofer G (2003) Impaired adrenal catecholamine system function in mice with deficiency of the ascorbic acid transporter (SVCT2). FASEB J17, 1928-1930

 

 

 

 

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